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2012年11月 1日 (木)

『城南信用金庫の「脱原発」宣言』 城南信用金庫理事長 吉原 毅

岩波書店から出ているブックレットのシリーズと似た分量、形態の小冊子である。城南信用金庫の活動は、原発の問題をおいかけてきた人間にはよく知られていると思う。吉原さんは、理事長としてその信用金庫のメッセージをリードしてきた方である。本書を読むと、その考え方がわかりやすく簡潔に整理されている。信用金庫の理念、位置づけ、社会貢献のあり方などから導いた行動指針であって、もちろん理事長の独断で世の中に反旗を翻しているわけではない。信用金庫が地域の人々に貢献すべきこと、道徳的に、社会に対して害悪となる行動をとっている企業とは取引をしない原則などから、東電から電気を買うのをやめてしまう。それは企業理念として当然のことだというのだ。また、徹底した節電をおこない前年とくらべて23%の節約を実現し、25%を支える原子力発電は、その気になれば止められるのだと実感から述べている。世間受けするメッセージをただ述べているのではなく、その行動は確固とした理念に基づいている。賛否はいろいろあるだろうけど、見事というほかないと感じた。

薄い本だし、500円と安価なのであまり詳細は書かないようにしたいのだが、一点、特にとりあげたいのは、吉原さんの貨幣哲学である。吉原さんは、お金はあぶないものだといって、次のように述べる。

p60 わたしの考え方はエンデとは違って、そもそもお金そのものが幻想であり、麻薬であり、危険なものだと思っています。お金は信用によって成り立っているものであり、そのことからしても、お金は幻想なのです。利息がつこうがつくまいが、お金は危険なものです

別の箇所では、

p53 貨幣というのは、人間の頭のなかで肥大化された自意識そのものです。個人主義、合理主義といったものが投影された、ひとつの幻想なのです。そのお金という幻想を、わたしたちは、あたかも絶対的なものであるかのように考えてしまう・・・・・。

p54 これはもう「拝金教」という宗教のひとつだと思います。宗教というと敬遠されるかもしれませんが、じつは「現代人は、お金という宗教にとらわれている」ということに気づくべきです

p60 つまり、人類の歴史は、お金との戦いの歴史なのです

p61 そもそもお金の本質とはそういた危険なもので、その危険性を押さえるためには健全なコミュニティ、道徳や良識が必要だと思います。つまり、お金の形態をいくら工夫しても、それ自体が危険なものだから、その弊害は是正できないと思います。

貨幣が幻想であること、幻想が主体となって自己運動しているのが現代の経済中心の社会であること、それに対する強い信頼は、もはや宗教であること。これが、金融機関のトップから出る言葉なんだと、ぞくぞくする。多くの人が、本書を読むように願ってやまない。

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